(2017/11/2) 前回「たがみそぎの「たが」」と題して記しました。
今回、1-1-995歌の「歌の現場」と題して、記します。(追記:2018年以降改めて始めた『猿丸集』のブログがあります。「わかたんかこれ 猿丸集・・・」と題しており、例えば3-4-15歌は、「わかたんかこれ猿丸集第15歌 いまきみはこずを」(2018/5/21付け)を参照ください。3-4-47歌はその後理解が深まりました。(2020/4/14 上村 朋))
1.この歌でみそぎをしているのは都から離れたところ
1-1-995歌の作者は、「たがみそぎ」と詠いだしています。この作者は「たつたの山」で「ゆふつけ鳥」がながながと鳴くのも聞いています。誰かがみそぎをしている場所は、「たつたの山」かその近くなのではないかと、推測できます。
古今和歌集の歌人の時代、禊を行うところは、ほとんどの貴族が行う旧暦六月末日の水無月のはらへならば、平安京の賀茂川が有名です。水無月のはらへは、その後貴族の邸内でも行われています。山中にでかけていません。
みそぎが実質祈願の行事であるならば、それは屋敷うちでしょう。陰陽師が必要ですから。寺院での祈禱にみそぎという行事は必要ありません。
2.たつたの山の所在地がわからない
みそぎが、山中で行われていないようですので、『古今和歌集』でこの歌の前にある1-1-994歌に詠われている「たつたのやま」と同じ山を指していないと思われます。
たつたの山が、1-1-994歌と違い、都のなかか、その近くの山とか山以外のところを指すのであるかもしれません。そうすると人里近くの小高い処と言うイメージ、及びゆふつけ鳥の鳴くのが人家近くの林であるので、例えば、神社がすでに設けられている時代ならば奥の院あたりとか神前の杜とかいうところ、神社がない時代でも都近くの岡があげられます。
3.『猿丸集』
1-1-995歌は、多くの歌集(と物語)に採録されており、『新編国歌大観』記載の21の歌集(物語)にでてきます。微妙に文字遣いなどが異なっているのもあります。
同書記載の歌集の成立順でみると、最古の『古今和歌集』の次ではないかと思える『猿丸集』や、物語(創作)に引用された(『大和物語』154段など)などにあり、これらの1-1-995歌の重複歌に、現場などの解明のヒントがないか、念のため、検討することとします。
ご覧いただき、ありがとうございます。(上村 朋 2017/11/2)